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東京大学医学部准教授である熊谷晋一郎氏は、新生児仮死の後遺症で脳性麻痺となり、車椅子で生活されています。
自分にはできないことがたくさんあると認め、
有限性の中で、ともかく私たちは生きていかなければならない。有限性を否定せず、認めた上で、じゃ私はどのような生き方をするのか。その意味を見出していくのが、「回復=リカバーリー」ということなんだと思います。東京大学医学部准教授 熊谷晋一郎氏
熊谷氏が生まれた1977年頃は、健常者に近い状態に戻すリハビリが盛んに行われ、熊谷氏は、辛いリハビリに明け暮れる幼少期を過ごします。
当時は、脳性麻痺もリハビリで治ると言われた時代で、熊谷氏は、生まれたままの状態で、どうして世の中に出てはいけないのかと悩みます。
その後、リハビリで脳性麻痺が治るのは誤りと訂正されます。
熊谷氏は、大学進学と同時にご両親の反対を押し切り、車椅子での一人暮らしを始めます。
ご両親と暮らしているときは、将来に対する「無限で抽象的な不安」ばかりだったが、それが、一人暮らしを始めると、「有限で具体的な課題」に変わったそうです。
ゲームをするように、一つ一つの課題をクリアしていく楽しさを感じます。
ご両親といるときは、監視される感覚があったが、一人でやると決めてから、普通であることから解放され、自由な感覚を味わいます。
東京大学医学部卒業後、小児科医として病院勤務を経て、東京大学医学部准教授として、障害の当事者として当事者研究の第一線で、執筆や講演に幅広く活動されています。
当事者研究とは?
「当事者研究」とは、障害や病気の当事者が、困っていることに関して、主体的に考え、実戦していく研究や取り組みのことです。
医者や支援者に任せっきりにするのではなく、似た経験を持つ仲間と助け合って、困りごとの意味やメカニズム、対処法を探り当てる取り組みのことです。
できないことを許す文化が、人の可能性を広げてくれる
熊谷氏が研修医時代に経験したことですが、
働く現場では、誰もが、忙しい。
誰でも、できることとできないことが当然出てきます。
熊谷氏は、できないことを「障害」と意味づけていますが、
できないことを許し、持てるものを出し合うことで、可能性を伸ばすことができると述べています。
また、何かがおこったときに責任を取るというリーダーシップがあると、一人一人の持てる力を遺憾なく発揮できるとも述べています。
「絶望だって、分かち合えば希望に変わる」
熊谷氏は、「困りごと」が「あなたもそうか」になると、一つのカテゴリーになると述べています。
カテゴリーの中での共通点や違いを見出すことで、輪郭が浮かび上がり、対処法を探ることができるようになります。
理想と現実の溝も、仲間との会話で埋めていきます。
自分が絶望と思っていても、他の人と分かち合えば、希望に変わる可能性が出てきます。
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トラウマと痛みについて
熊谷氏も慢性の疼痛に苦しんだ時期がありました。
医師であるご自身が、ドクターショッピングもされました。
研究によると、原因のわからない慢性疼痛は、過去のトラウマやPTSDに関する脳の部位と関連が深い。
過去のトラウマやPTSDを邪魔なものとして扱うのではなく、自分の人生の中で、意味あるものとして扱うと痛みが和らぐ。
傷つき続けたからこそ、邪魔でなくしたいと思えば思うほど、神経が痛みに集中し、悪化していくもの。
痛みを体からのメッセージとして、意味付けしていくことで、癒されていきます。
まとめ
困りごとを分かち合えば、一つのカテゴリーになる。
違いや共通点を見出せば、対処法も見えてくる。
病気や障害、忘れてしまいたいトラウマやPTSDも、全部含めて自分自身。
それを否定せず受け入れて、意味を見出していくことが、回復するということ。
無限で抽象的な不安があったなら、とにかく飛び込んで行動してみよう。
課題は有限で、一つ一つやっていけば、身体で乗り越えられる。
回復とは、変わり続けること。
できないことを許すことが、可能性を広げていきます。
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